アメリカ連邦議会の下院が通過させた法案4437号の詳細
もう年も押し迫り、仕事をされている皆さんは「締め」があってばたばたされているのではないでしょうか。年末といっても別にいつもと同じように日は昇って沈むのですが、なんとなく仕事が忙しくなります。体には注意して2005年を乗り切りましょう。
さて今回は「じんけん」ニュースにふさわしいというか、皆さんに「人の権利」とはどういうものか注意を喚起していただくだけではなく、ちゃんと一人一人の意見を持っていただきたいと思っているトピックです。
アメリカ連邦議会の下院において移民や外国人に驚くほど厳しい法案が通過しました。下院が通過させた法案4437号の詳細を皆さんにも分かっていただきたいと思います。下手をすると110万人のアメリカに滞在する外国人が強制送還の対象となってしまう可能性があります。ここで、外国人というのは、非移民ビザを持ってアメリカに滞在をしている人だけではなく、永住権保持者も含まれるということを認識してください。まず、大まかにどのような法案か考えて、その後、具体的にどのような内容が法案に含まれているのか考えていきたいと思います。
今回の法案はアメリカに不法滞在をしていることを移民法違反だけではなく、刑法に抵触する事実だと看做すことを許すことを軸としています。また、外国人に対してのデュープロセス保護の範囲を縮小すること、強制送還の手続を簡素化すること、新たに強制送還の対象となる道徳違反の罪の範囲を拡大すること、帰化要件の厳格化などが含まれています。この方向性を見ていただければわかりますが、移民で成り立ってきた国とは思えないようにアメリカに滞在する外国人に対して規制を厳しくしています。外国人であるがために、司法においても不利益を甘受しなければならないということが発生することは容易に想像でき、アメリカ連邦憲法に抵触する自体が発生するでしょう。というか、この手の法律が成立し、私のクライアントが不利益を被ったら、連邦最高裁まで闘いたいと思います。
この法案に具体的に記載されている事項をいくつか考えておきたいと思います。
箇条書きにしてみます。1)抽選によるビザの取得を取りやめる、(2)各州、各郡その他の警察機関に移民法に関する権限を与え、不法滞在者等を逮捕・勾留することを許す、(3)一罪の軽罪、たとえば飲酒運転等に基づき強制送還を許すこと、(4)移民局の捜査権限を増強し、外国人の犯罪の取締を強化すること、(5)麻薬捜査、人身売買などの罪に関しての捜査・逮捕権限を付与すること、などが挙げられます。
以上を見ると、移民法自体を厳しくして、外国人を取り締まるだけではなく、移民局に強大な捜査権限や逮捕権限を与えるだけではなく、連邦の行政作用である移民法に関する権限を州その他の警察機関にも与えるということを法案は許しています。行政権力の付与を広範囲で認めることになっています。
上記がある程度の法案の概要です。来年一月議会が再度開会されると、この法案は上院に附され審議されます。様々なリベラルな団体や移民のサポートをする団体から反対の動きはもちろんあると思いますが、もし、皆さんにも影響する可能性があれば、ぜひ地元の上院議員などにご自身の意見を述べていただきたいと思います。年末にこういった話題は憂鬱になりますが、しっかり私も自分のスタンスを打ち出していきたい問題と思います。それでは、また次回までさようなら。良いお年をお迎え下さい。
H-1B非移民ビザおよび雇用をベースとする永住権の改正法案について
連邦上院で雇用系の移民法改正に向けて、新たな法案が提出されました。新たな動きとして今回も皆さんと連邦議会がどのような考え方をしているのか、シェアさせていただきたいと思います。上院の司法委員会での議論のレベルですから、これからいくつもハードルが予想されますが、どのような法案になっていくのか、その原型を見ていきましょう。
まず、大まかに私が感じた感想は、移民法をアメリカ政府の一定の収入にしていこうという方向性です。そして、アメリカ政府の収入を増やす代わりに、移民の規制を緩くしていくという漠然とした流れがあるように感じます。私はこのようなやり方が良いのか分かりませんが、とにかくお金が絡んだ移民政策だということは理解しておいてください。ある意味、外国人がアメリカで働く上で、余計に税金をとられるようなものではないかと感じています。そのうちあまりにもひどくなったら連邦政府相手に訴訟にでもしてみましょうかね。
さて、今回は委員会レベルですが、具体的な案が出てきましたので、以下箇条書きにしておきます。とにかく、以下は法律になっているわけではなく、議会でどのような動きがあるのかを把握してもらうためのものですから、法律になったと勘違いをしないでください。また以下は大事な部分を私がより抜きました。
まず一つ目ですが、永住権申請を雇用に基づいて行う場合(カテゴリーとしてはEB-1、EB-2、EB-3などがあります)、500ドルの申請費用を創設しようというものです。
2つ目に、今まで雇用ベースの永住権申請において、毎年上限数が決められていましたが、その上限数に満たない許可数しかなかったこともあります。この余剰分を将来的に使えるように枠を拡大しようという案があります。この余剰分は今までで、約9万件から10万件に及ぶと考えられています。
3つ目ですが、H-1Bビザに関して今まで使われていなかった分(1991年度までさかのぼると約30万件分余剰していた)を将来的に使えるようにして、現在の6万5千件に加えて、さらに3万件毎年増やしていこうというものです。この部分はカリフォルニアのファインシュタイン議員が提案して受け入れられた形になります。彼女はさすがですね。しかし、この3万件の増加分については今の申請費用について、さらに500ドルの追加申請金を要求していこう、と考えているようです。この部分はいただけません。
4つ目ですが、L-1ビザの申請について、新規に750ドルの申請費用を創設しようという案が出ています。
上記から分かるように、H-1BビザだけではなくL-1ビザや永住権まで申請費用の増加を射程に入れていますが、これらのビザ・永住権は就労ビザですから、まああからさまに移民に対して不平等な扱いはしているとはすぐには言えません。費用は増加しても、外国人がアメリカで就労できる枠に賛成される方も多くいるかもしれませんね。これからの立法を待ちたいと思いますが、どのような方向に移
民法が向かっているのか、皆さんに知っておいていただきたいと思い、今回のじんけんニュースにしました。それではまた次回までさようなら。
アメリカ議会下院を通過した対移民法案について
大統領選挙が近くなってきました。アメリカにとっては非常に重要な選挙です。今後四年間の舵取りが誰になるのか、ニュース番組でもまず最初に取り上げていますね。移民の問題についても非常に注目されています。何度も私がJINKEN.COMニュースに書いたように、今アメリカは移民に対して非常に警戒をしており、不法滞在者だけではなく、合法滞在者にも影響するような方向に向かっています。今回もあまり明るい話題ではありません。
2004年10月8日に、アメリカの下院で282対134という圧倒的な票により、対移民法案が通過しました。上院で通過している法案とは内容が違いますので、今後上院と下院の間で調整がされることになります。まだ、法律にはなったわけではありませんが、アメリカの政治の世界では移民に対する風当たりは強くなるばかりです。特に共和党が押しているわけですが。
今回下院を通過した内容の主な点は、(1)強制送還適用の拡大(2)難民認定の要件の厳格化(3)アメリカ市民以外への運転免許証交付の制限(4)移民局の決定に対する連邦裁判所への救済申し立ての一部廃止(5)連邦裁判所への申し立て中のアメリカ国内滞在禁止(6)強制送還先の政府の安定・不安定を考慮することの廃止などです。
今回の法案に対しては、様々な人権団体やアメリカ移民法協会、それに各コミュニティーが大反対していましたが、悠々と通過してしまっているという現実が現在のアメリカ議会を反映していると思います。
まだ、両院の協議が行われ、最終的にどのような法案になるのかは決定されていませんが、大統領選がデッドヒートしている今、共和党はブッシュが大統領である間に法案を成立させてしまおうと躍起になっている感じが否めません。この法案に対しロバートケネディ議員(民主党)も非常に強い調子の反対論を主張し、公の文書としました。今回のJINKEN.COMニュースの末尾に英語のままですが、貼り付けておきますので、興味のある方はご覧ください。(あまりにも長文でスペースの関係上掲載できませんでしたので、一部割愛させていただいております)
とにかく、選挙の行方がアメリカに住んだり関係する外国人にも本当に影響するようになってきました。アメリカの行方を皆さんも見極めていってくださいね。それではまた次回までさようなら。
●ケネディ議員のステートメント●
Statement of Senator Edward Kennedy on the Immigration Provisions of H.R. 10
Cite as "Posted on AILA InfoNet at Doc. No. 04101261 (Oct. 12, 2004)."2.
STATEMENT OF SENATOR EDWARD M. KENNEDY "THE IMMIGRATION PROVISIONS OF H.R.10"
October 11, 2004
Mr. Kennedy. Mr. President. I have serious concerns about the direction our Republican colleagues in the House of Representatives have taken on the legislation to implement the recommendations of the 9/11 Commission.
The House bill, H.R.10, departs in significant and problematic ways from the Commission's specifically-tailored recommendations to protect our country against future terrorist attacks. The recommendations call for preventing terrorist travel, establishing an effective screening system to protect our borders, transportation systems, and other vital facilities, expediting full implementation of a biometric entry-exit screening system, establishing global border security standards by working with trusted allies, and standardizing identity documents and birth certificates.
Instead of adhering to these carefully considered measures, as the Senate has done, the House Republican leadership has included long-rejected, anti-immigrant proposals that have nothing to do with the Commission's recommendations. The House bill severely limits the rights of immigrants, asylum seekers, and victims of torture and fails to strengthen the security of our nation.
Among the worst provisions in the House bill are those which create insurmountable obstacles and burdens for asylum seekers, including many women and children, eliminate judicial review, including theconstitutional writ of habeas corpus, for certain immigration orders, and which allow the deportation of individuals to countries where they are likely to be tortured, in violation of our international treaty obligations.
Many share my concerns with the House bill. The list of critics, lead byfamilies of the 9/11 victims, is rapidly growing. A recent letter to House members, signed by more than two dozen family members of persons who died in the terrorist attacks, states that the immigration provisions are outside the scope of the Commission's recommendations and urges House members not to enact them. To underscore their concerns, the families state their "strong collective position that legislation to implement the 9/11 Commission recommendations not be used in a politically divisive manner."
Similarly, the chair of the 9/11 Commission, Thomas Kean, has said that the House immigration provisions "which are controversial and are not part of our recommendations to make the American people safer perhaps ought to be part of another bill at another time." Likewise, the vice-chair, Lee Hamilton, warned that the inclusion of these "controversial provisions at this late hour can harm our shared purpose of getting a good bill to the President before the 108th Congress adjourns."
移民局が議会に提出した報告書について
もうアメリカの暦の上でも「夏」ということです。2004年ももう半年終わってしまいましたね。移民法の方は相変わらず「厳しくなる方向」の話が多いですね。最近は一昔前まではストレートにビザが取得できた案件でも、移民局が非常に猜疑的な目で審査をしていることがひしひしと伝わってきます。テロ対策が思わぬ方向に向いていってしまっているような気がして残念な気になってきてしまいます。このようなことをやっていたらアメリカに来たいと思う外国人はどんどん減ってきてしまいますよね。
今回はちょっと明るい、というか良い方向の話題を考えてみたいと思います。2004年6月16日に移民局が議会に対して現存する申請書類のバックログについて、2006年末までに解決をする方針という内容の書類を提出しました。その前向きな内容の一部をここでご紹介しましょう。
まずバックログの定義については詳しくこの報告書で書かれています。まず申請書類が移民局に到達しているのに、審査の結果が済んでいないものを審査中の申請書類と呼びます。この審査中の申請書類から、過去6ヶ月間に移民局に届いた案件を差し引いた案件数を「バックログ」と呼んでいます。恐ろしいことに、2003年時点でバックログとなっている申請書類が実に340万件あり、加えて難民認定の申請が370万件移民局に存在していると言うことです。永住権の案件が6年7年とかかるのも納得がいってしまう数字です。この数字を実際限りなく0に近くしようと試み、プランを立てているのがこの文書の実質的な内容です。2003年末までのデータを使いこの難民認定をのぞいたバックログの分を分解すると、顕著なものが、I-130、つまり永住権申請のスポンサー側提出書類です。バックログが150万件を超えています。次に永住権の申請者側の提出書類であるI-485が76万件程度バックログとなっているようです。
この数字に対する解決策として、審査のペースを速めていくということをまず第一義に考えているようです(いままでの様子を見ていると速まってある程度当たり前だとは思うのですが)。そのほかにもいくつかユニークな方法を考えているようなので、ここでご紹介しておきましょう。まず、I-90という、永住権のカードの更新についてシステムを考えなおそうとしています。なぜかというと、基本的に、永住権を取得する際にチェックは厳しく行っているわけですから、いったん永住権を取得した外国人に対して、チェックを厳しくしても意味がないという判断からなのです。現在年間100万件の永住権更新が行われているのですが、その審査を簡略化するなりして対応し、その余った人員を他の部署に移そうというのが作戦です。この点私も同感で、いちいち10年ごとに永住権を更新する程度のことで申請書を作って審査までするというのは、時間と労力が有効に使われていないと思いますので、良い改革だと思います。
次に、ビザの発行に関して、ある程度の規模の会社スポンサーに関しては、事前に認定する制度を大きく導入していこうというアイディアがでています。Lビザにはブランケットペティションといい、一括して最初から会社の申請ができるのですが、そのようなシステムを拡大して、会社が一定の申請をしておけば、以後いちいち各外国人のビザ申請において、会社の書類を提出しなくても良いというシステムを導入したいと移民局はしています。審査の時間を減らすための方策なんでしょうね。
それから、申請における書類や証拠の明確化ということを移民局は率先して行いたいとしています。非常に良いことだと思います。申請の際、弁護士にとっても申請者本人や申請主となる会社においても、提出書類の過不足が問題になったり、ある程度の経験に頼ったりと不明確な部分が多く、ケースによっては付けなくても良い書類が他のケースでは必要とされたり、安定性が非常に欠けていたのです。その問題を解決しようとしているのです。現在、1年前から比べると、移民、非移民ビザの申請過程において、追加証拠提出命令がでる可能性が倍以上になったと思います。つまり、その移民局のやりとりに数ヶ月以上かかる例が多いので、移民局にとっても申請者にとってもプラスになることはまったくありませんでした。この細部の提出書類や提出証拠の明確化をはかることで、事前に申請が可能か、また申請に必要な書類は全部整っているのかなどをチェックできるようにしようとしているのです。ある意味、完全に明確な基準をつくることは不可能でしょうが、こういった試みは、移民申請の明確化を助けるものだと思います。
以上は今回のレポート文書のごく一部ですが、できるだけプロセスの潤滑をはかりたいという今の移民局の態度には評価できるものがあると思います。しかし、目標まで設定していますが、現実的にその目標まで達成することができるのかは未知ですし、議会がどのように反応するのかも、わからない部分だと思います。
移民法に関しては外国人に厳しくなってきている部分はありますが、このようにプロセスそのものを考え直しているということについては、私はアメリカという国に対しての高評価になるだろうと思います。また、次回新しいトピックについて考えていきましょう。それでは次回までさようなら。
SOLVE法案提出について
最近公表されるようになった米軍によるイラク人捕虜に対する虐待を皆さんはどう思われますか?私はショックを受けました。ブッシュ・ブレア両政権が戦争を勝手にはじめて、更にイラク兵だけではなく民間の人間を殺害したり、虐待したりしている事実が明らかになってきていますから、英米が戦争を開始したときから現在まで好き勝手なことをしている、という印象が私の心の中でかなり大きくなってきています。世論はこれから厳しくなってくるでしょうが、アメリカにはある種の勘違いをしている人が少なくないということを実感しました。皆さんは、今回の報道をどう思われますか?
さて、今年の11月には大統領戦が近づいていることをご存じの方は多いでしょうが、民主党も共和党ブッシュになんとか勝ちに行こうと、アピールを多く行っており、ケネディ議員も5月4日に民主党の移民法改正法案について詳細を発表しました。
法案にざっと目を通すと、現在のホワイトハウスの方針とはまったく違って、積極的に移民を受け入れていこうという姿勢がはっきり見受けられます。今回の法案は、各移民法関係団体から歓迎されており、私見でも、この法案または似たような案が通ることに期待しています。しかし選挙の結果によっては、共和党が強ければ潰されてしまうでしょうね。
今回のJINKEN.COMニュースでは、簡単にSOLVE法案全体を皆さんと考えていきたいと思います。ただし現時点はあくまでも「法案」という段階であって、どのような意向を民主党が示しているのか、ということを感じていただければ良いと思います。
まず、SOLVE法案というのは、Safe, Orderly Legal Visas and Enforcement法案の略です。しかし、よくこのようなこじつけの名前を考えますね。感心します。短縮形の読み方がSOLVEということですが、現存している移民法の問題を「解決」するという目的があることから、このような名前が付いたのでしょうね。名前はどうでも良いのですが、中身はどうかというと、基本的には四つの柱があります。(1)勤勉な外国人を合法化すること(2)離ればなれになっている家族と合理的な期間内に再会できるチャンスを与えること(3)一時的な雇用就業者に関する許可・管理システムの改善、(4)被雇用者の権利を守っていく、というような骨格になっています。
この法案の前提として、現在の移民法が実際の適用においてちゃんと機能していないことや、国境での問題などが存在していること、不法の移民が多数アメリカ国内には存在しているが、その不法移民を合法化することでアメリカの国防関係にも寄与するし、納税義務等を生じたり、メリットが大きいことなどが考えられています。移民法実務をやっていると、不法移民の問題として一番大きいのが、家族と離ればなれになってしまうというところでしょうか。これは、弁護士としても胸を痛めます。詳しくどのような状況が存在するのかはここでは割愛しますが、今までの永住権申請の大きな悩みとなっていました。このような問題を今回の法案で解決しようと試みているのです。また、不法就労者の雇用についても、この法案は対応を試みています。すなわち、2002年にアメリカ連邦最高裁判所で判決された事件(The Hoffman Plastic事件)において、一定の被雇用者の権利について(たとえば、過去の賃金等)否定された判例がありました。これらの判例は、移民法上のステータスがなかったというだけで雇用に関する権利を享受できず、批判を浴びていました。今回の法案はこの点を立法によって修正しようと試みているのです。
では、具体的にこのSOLVE法案はどのような内容を含んでいるのか以下考えていきましょう。まず、この法案が可決して施行された時点で、過去5年間就業して(個人営業も含む)税金を払っていた不法就労者及びその配偶者や21才以下の子供については、グリーンカードを与えるという点が最たるものです。また、その申請中は渡航は自由にできるように考えられています。夢のような法案ですね。5年間アメリカに滞在していない場合でも、ある一定期間試験的な就労ビザを与えられ、その試験期間が過ぎ、刑法や移民法に触れるようなことがなければ、正式に永住権を与えてくれるという制度をこの法案では提案しています。
次に重要なのは、永住権を現在待っている外国人に関してです。この法案によると、5年間以上永住権の発行を待っている外国人に対して、優先的に審査を受けられるように取り計らう方法が細かく規定されています。また、現在移民局で導入されている3年10年の入国禁止規定を廃止することも盛り込まれています。
また、専門職ではなく、スキルをあまり要しない仕事に就いている外国人のために、新たにH−1Dビザというカテゴリを発行上限数を25万件に設定し新設することも法案に盛り込まれています。
この法案が「Comprehensive」と言われるには理由があり、以上のポリシーやおおまかな内容を基本として、ちゃんと現存している移民法の条文を細かく修正する案をつくっているからです。ここでは、細かい条文の改正案までについては書く余裕はありませんが、もし議会を通過する見込みがあるのであれば、逐一JINKEN.COMニュースで取り上げていきたいと思っています。まあ、移民法を手がける弁護士にとっては夢のような改正案です。全体でなくても、一部だけでも議会を通過してもらいたいものです。それでは、次回まで、さようなら。
現在提出されている法案の中から: H−1Bビザとビザウェーバー
日本では入学式や入社式の話題も収まりつつありますね。この時期、アメリカでは税金関連が忙しい時期ですので、私の顧問先の会社も、法律の問題から会計・税務の方に感心がいくので、通年はほんのちょっとだけ一息つけるのですが、今年は本当に忙しく働いています。外は青空で澄み渡っているんですけどねぇ。皆さんはお元気ですか?
さて今回のJINKEN.COMニュースは、現在アメリカ議会に提出されている法案のなかから、皆さんにも関係しそうなものをピックアップしてみたいと思います。そしてこれは実際に法律になっているものではなく、現在議員立法として議会に提出されている段階なので、実際に使われている法律だとは理解しないでくださいね。今回、法案を紹介したいのは、現在どのような考え方がアメリカの議会で出ているかというトレンドを感じていただくことで、将来の移民法の姿を少しでも見ていただければ良いと思ったからです。
まずH-1Bビザに関して現在上程されている議案について見ていきましょう。法案第4166号によると、アメリカ国内の大学で修士以上の学位を得た外国人に対し、各年20,000人を上限にして、H-1Bの特別枠をつくろうという動きがあります。しかし、同時に以前H-1Bを取得する際に必要であった通常のビザに加えて、更に1000ドルが申請に必要になります。驚く無かれ、さらにこの1000ドルの追加申請料に加え、500ドルの"Fraud Detection and Prevention Fee"、つまり移民詐欺を事前に検知したり、防ぐための費用を各申請者に支払わせるという法案内容になっています。
私見ですが、H-1Bの枠を拡大するということは歓迎だとは思いますが、その拡大に対して今までよりも高い費用を課すというのは、雇用者にとっても外国人本人にとっても重荷になるだけであり、テロ問題から発生した外国人のコントロール問題が波及しているだけのような感は否めません。抜本的な解決策にはほど遠いというのが、この法案を読んだ感想です。また教育を受けたものを優遇するということはH-1Bの趣旨にある程度合致していますが、アメリカの大学を卒業した者を優遇するということは外国で名をなした著名人をカバーできずに優秀な人材を逃してしまう可能性があり、H-1Bのそもそもの目的が達成できなくなってしまうかもしれませんね。
次はビザウェーバーについての法案です。移民行政側は議会に対して、ビザウェーバーでアメリカに入国する外国人にたいして、マシン・リーダブル(機会読取式)のパスポートを持つように要求する法律(今年、2004年の10月26日が施行予定)を二年間延期するように法律の修正を求めました。ガイドラインがビザ・ウェーバーで入国を許可される国々に行き渡ってない現状を鑑みての修正要求だと考えられます。日本もビザウェーバーで入国を許可されている国の一つです。
また、ビザ・ウェーバーでアメリカに入国する外国人に対しては、今年、2004年の9月30日から、指紋採取および写真撮影を要求することが決定しています。これにともなって各国から不満の声が聞こえてきますが、アメリカ側は(1)情報を積極的な諜報活動等に利用しないこと、(2)アメリカ入国前に各国である程度の審査が済むような仕組みをつくること、さらに(3)入国の際、時間がかかるのを審査官の増加などによって防ぐことなどに対して努力をすることを目標としています。しかし、どこまで現実になるのか、現在ではなんとも言えないでしょうね。
もちろん様々な法案や修正法案が提出されていて、以上はほんの一部です。皆さんに関係があるのではないかと思われる箇所を抜粋して考えてみました。また、法案が現実化しそうになったら、JINKEN.COMニュースで考えていきたいと思います。それでは次回まで、さようなら。
不法移民労働者の合法化について
アメリカでBSEと思っていたら、今度は日本では鶏のインフルエンザが問題視されています。エイズも動物からうつって来たと言われていますが、やはり生命力的には、野生の動物に比べて人間というのはもろい部分があるのでしょうかね。これだけいろいろな新種の病気などがはやっている世界ですから、健康に生活できることに対して感謝をしなければならないのでしょうね。皆さんお元気ですか。
さて、2004年の1月7日にアメリカのブッシュ大統領は、実質上はメキシコの政治家に圧された部分は強いですが、不法移民労働者の合法化をある程度行うということを一般に発表しました。現時点では、今回のプログラムに関する詳細は決定されていませんが、骨子についてはブッシュ大統領が以下のような内容を明らかにしています。また、詳細が発表されたら、JINKEN.COMニュースでも取り上げていきたいと思っています。
今回の改正を加速させたのが、メキシコとの国境の問題です。国境を通り、多くの不法就労者がアメリカに入国してきているわけですが、入国者を公に把握しておくことで、テロなどのファクターを減らそうという印象があります。その他の今回の行政立法政策において、不法移民を合法化することで、将来自国に帰りやすくするということや、将来永住権の申請を促進すること、アメリカでアメリカ人が不足している事業の活発化を促すこと、などが目的となっています。
今回の不法移民の合法化を受けて、今まで合法にまじめにやっていない人が不利益を受けないように様々な工夫をすることがあきらかになっています。たとえば、今回の不法移民の合法化の利益を享受できる人を一般の永住権申請者に優先するようには取り計らうことはしないことも、明らかにしていますし、永住権申請者が増加することを予測して、受理数の上限を引き上げることも考えているようです。ですので、現在合法にてアメリカに滞在する外国人には利益も不利益もないと予測されます。
外国人に対する利益不利益のみではなく、アメリカ企業に対しても外国人雇用につき安定性を与える役割を今回のプログラムは考えているようです。すなわち、外国人労働者の雇用につき、適当な人を見つけられること、不法外国人を雇用する危険性を減らすこと、他のアメリカ人労働者の雇用を守り、健全な労働環境を提供することなどが盛り込まれています。
現在わかっている手続きについては、各不法滞在者は移民局または政府が将来指定する連邦の役所に対して、一回の手続き金を支払い、登録を済ませます。登録を済ませると、連邦政府から、現在の予定では3年間の労働許可証が与えられ、3年後に更新をすることも許されるという方法が採られるようです。また、この労働許可証を持っている間は、永住権の申請なども行えるようにできる方向で考えられています。また、将来的には、アメリカ国内に滞在する不法移民に対しては適用せず、外国からアメリカに就労にくる外国人にのみ適用することを考えているようです。
どのような書式、またどのような情報を連邦政府に対して提出しなくてはいけないのか、現時点では不明ですので、今回のブッシュ政権の意向を受けて、詳しい設定がされた時点でまた考えていきましょう。
また次回までさようなら。