2004年12月08日

判例−飲酒運転と強制送還について

JINKEN.COMニュースの執筆が遅れてしまいました。私が風邪をひいたからです。この年末の忙しい時期に風邪をひくのは本当に皆さんに申し訳ない、と思いつつ、コンピュータからも離れ、ゆっくりしました。スクリーンがない一日もおつなものですね。皆さんもたまにはスクリーンから目を離して、山の緑や海の青を楽しんでくださいね。

さて今回は飲酒運転(Driving Under Influence)に関してアメリカ連邦最高裁判所から出された判例について皆さんと一緒に考えていきたいと思います。移民法の強制送還に関しては現在怒濤のように変化が起きていますが、強制送還をし易くしようとしている点ではあまり変化がありません。「行き過ぎ」と思える事例も少なくありません。私も法廷弁護士として移民裁判所にもこの12月は頻繁に通っています。

以前から、犯罪にアメリカで巻き込まれると強制送還の憂き目に遭うということはJINKEN.COMニュースでもご紹介してきました。永住権を持っていても、現在強制送還の手続をとられてしまっているケースも少なくないのです。
犯罪歴のある外国人にとっては非常に肩身の狭い判例が多く出る中、さすがですね、アメリカ連邦最高裁判所では、非常にフェアな判例がだされました。ここでは割愛しますが、2001年にも移民法に関して、私が涙してしまうくらい感動した判例をだしているアメリカの最高裁判所ですが、今回のケースも非常に「納得」できる内容の判例をだしてくれました。こういう判決があるからアメリカで法律業務をやっていて楽しいのです。

飲酒運転それだけでは、強制送還にひっかかる罪とは一般的に移民法では考えられていません。もし何罪も重ねて飲酒運転があると、その人の道徳的な問題があると考えられますが、飲酒運転をしただけで、強制送還、つまりアメリカで築き上げてきた何もかも失うということはあまりにも酷であるという認識は法律家の間でも常識的になっています。

ところが問題になるのは飲酒中に運転をして人を轢いた場合です。飲酒中に人を轢くと、「暴力を伴う犯罪 (Crime of Violence)」という移民法の条文に抵触してしまい、そのことだけで強制送還事由にひっかかってしまいます。
この問題は移民法を手がける弁護士にとっては悩みの種でした。もっとも書類だけ作成している事務所ではたいして気にも留めなかったかもしれませんが、移民法廷では、飲酒中の事故という事例によって何人もの外国人が強制送還の憂き目に遭ってきたのです。

たしかに、酒を飲んで、節操もなく車を運転して人を轢いているのですから、感情的には許し難いですし、被害者の家族にしてもやりきれない思いがあると思います。私の友人も飲酒運転をしていた無責任な人に殺されました。感情的な思いは法律家のなかでもあると思います。しかし、移民法上のCrime of Violenceという定義を見ると、基本的には暴力犯で「故意」がある犯罪に限られます。
「故意」というのは法律用語ですが、簡単な例を使って説明すると、傷害罪において人に傷を負わせようと思う心を指します。この悪い心をもって犯罪をする人を移民法では暴力を伴う犯罪として定義しているのです。飲酒運転で人をひき殺してしまうという場合は、確かに飲酒をして運転するという故意はありますが、最初から人をひき殺すという故意を認めるのは難しいケースが多いわけです。人の死を引き起こしたとしても、最初から殺そうとは思っていなければ、人を殺す故意を認めるのは法律上難しいのです。もちろん安全に運転する注意義務に違反して人を轢いていることはあきらかですから、「故意」ではなく、少なくとも「過失」責任は負うとは思います。

今まで、アメリカの連邦裁判所ではこの飲酒運転において過失致死を起こしていた外国人の強制送還事件で、「暴力を伴う犯罪」であると認定する裁判所と認定しない裁判所がありました。今回の最高裁判所の判決で飲酒運転において過失により人に致死傷の結果を起こしたケースについては移民法上の「暴力を伴う犯罪」には該当しないと判断しました。たしかに引き起こした結果については深刻かもしれませんが、故意についての判断はこの最高裁判決は妥当であると思います。もし、興味のある方は連邦最高裁判所が2004年11月9日に判示したLeocal v. Ashcroft, U.S. (November 9,2004)という事件をリサーチされてください。

今回は少し難しい内容でしたが、非常に重要な判例なのでご紹介してみました。皆さんは風邪をひかれないよう、注意されてくださいね。それではまた次回まで、さようなら。  
Posted by jinkencom at 06:47Comments(0)TrackBack(0)

2001年08月24日

最近の判例から―強制送還について―

事件名:Zavaleta-Gallegos v. Immingration and Naturalization Service

事件番号:US Court of Appeals 9th Circuit Case Number 99-71017

判決日:2001年8月20日

要旨:過去に移民法上の道徳違反の罪に該当する罪を犯して有罪となった場合、再度ビザを取得して入国しても、その後強制送還の対象になることを判示した。

事実関係: 原告であるZaveleta-Gallegosはエルサルバドル出身で、1984年に入国審査を通過することなくアメリカに入国(当時15歳)。 原告の母親はアメリカ永住権を申請、1989年には取得した。その後、1995年にはアメリカ市民権も取得した。 原告は1993年にストーカー行為をしたことが元となり、刑事事件で事実上有罪(no contest)を認めた。 原告は重罪(felony)として有罪と認められ、ストーカー行為が移民法212条に定められる道徳違反の罪(Crime of Moral Turpitude)となるため、移民局は強制送還の手続きをはじめた。 道徳違反の罪に問われた外国人は、強制送還の対象となる (移民法212条)。 8ヶ月の懲役のあと、原告は母国に自発的に帰国した(Voluntary Departure)。 1994年に原告の母が申請していた原告を受益者とする永住権申請が認められ、原告はエルサルバドル
のアメリカ大使館において永住権ビザ申請を行った。 その申請書において、原告は道徳違反の罪を起こさなかったということを記載した。 アメリカに入国する際に、1993年の道徳違反の罪に関して道徳違反であるという事実について、移民局に対して放棄申請(waiver)を行うのを怠っていた。
 移民局は原告の1994年の入国の際に放棄申請がなかったこと、以前に出国する前に道徳違反の罪で有罪を認めたことから強制送還をした。
 原告は、以前に有罪となった事実を、新たにビザを取得してアメリカに入国する際に適用して強制送還にすることは移民法212条に反するとして、アメリカ連邦高等裁判所第九巡回区に移民局の決定を控訴した。

判決の要旨: 移民局が過去の道徳違反の罪を理由とし、入国の拒否をすることは正当である。裁判所は当該原告がビザ(永住権)の再申請の際に事実を述べずに、放棄申請を怠った事実を認めたうえで判示した。

コメント: 日本人のかたがたでも、刑事事件のトラブルに巻き込まれて強制送還となる例をたくさん見ていますが、再度アメリカに入国する際には必ずどのような罪であってもまず放棄申請が必要がどうかを確認されることが大切です。刑事事件が過去のものであっても適切な処理がなされていないと、新たにビザを取得して入国する際にも強制送還の対象となりかねません。

それではまた次回まで。  
Posted by jinkencom at 11:38Comments(0)TrackBack(0)