そこまでやるかなぁ・・・査証に関する詐欺的行為について
ずいぶん陽気がよくなってきたと思いますが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。花粉症の方も多いのかもしれませんが、めげずに春を楽しんでください。
さて今回のじんけんニュースは弁護士が有罪になってしまった事件について皆さんに考えていただきたいと思って取り上げたいと思います。
3月の初旬、2名の弁護士と2つの就職斡旋業を営む会社の役員が移民法にかかわる詐欺で有罪を認め、一人の弁護士は24ヶ月の実刑と75万ドルの罰金が科され、他の被告人も重い罪で処断される事件が連邦裁判所でありました。実刑というのは実に重いとは思います。しかし、どのようなスキームをすれば実刑になるのか、皆さんにも知っておいていただきたいと思います。
起訴されて有罪を認めた弁護士の一人は実に33件の事件で起訴されました。33の独立した実行行為があったわけですが、その内容は詐欺的な方法によって、ビザや永住権を取得した、という内容です。興味深いのは自分の法律事務所で19人雇ったことにして、ビザを発給していたということです。雇用の実態はないのに、アメリカに入国し滞在することを外国人に提供していたのですね。
スキームは結構複雑なやり方でした。移民局などがずいぶん事件を内偵していたのでしょう。まず、就職斡旋業を通して、ビザの基準に満たない経験を持つ人達を、紙のうえでは経験あり、ということにして、いろいろな書類を作成します。弁護士と就職斡旋業が共謀すれば、いろいろな書類は形にできるわけです。そのうえで、法律事務所内で虚偽の情報をもとに、移民局に対する申請書を作成し、内容にまちがいないとして、提出します。この方法を繰り返し、外国人にビザを発給していたのですが、結局ばれてしまった訳です。
捜査資料の詳細はわかりませんが、逮捕のきっかけになったのは、書類上なにか怪しいところがあったというだけではなく、たぶん内部告発または、受給者がなんらかの形で官権の目に留まったのでしょう。もちろん、このように大きなニュースにするのは、法律事務所関係者に対する萎縮効果もあるでしょうが、とにかく数が多すぎたのが敗因なのだと思います。結局就職斡旋業の役員達も逮捕され、ビザを受給した者も強制送還の対象になるわけですから、プラスになることは何もなかったのではないでしょうか。
移民法というのは、行政法ですから、通常の法律と違って法律論を交わすという面は非常に少なく、「どれだけ書類が用意できるか」という面が強調されます。もちろん、正当な方法で書類を集めることは大事なのですが、そのことばかりを気にしていると、虚偽の書類なども用意するような輩がでてきてしまうのですね。よく私が聞くのは、悪知恵を外部でつけられて、事情をしらない弁護士が書類を作成して出してしまう、というケースです。弁護士が出し抜かれてしまうわけですね。これは弁護士からみると「間抜け」ですが、実際少なくないようです。もちろん、ビザが欲しい、永住権が欲しいという方は多いのかもしれませんが、虚偽の申請をしてまでして、アメリカに住みたい、というのに乗せられるのは、なんとも悲しいことです。しかし、もっとひどいのは今回のような弁護士ですね。外国人の中には、本当に事情を知らずにこのような弁護士に任せてしまい、結局強制送還になってしまったケースもあるでしょう。たぶん安くない弁護士費用を支払ったりもしたのでしょう。消費者の立場からどの弁護士を選ぶか、ということは切実な問題なのかもしれません。しかし、このような事件に巻き込まれないように、とにかく調子の良い話しに飛びつくのだけはやめてくださいね。うまい話には必ず裏があるというのは、常識です。
また次回までさようなら。
Posted by jinkencom at
18:15
アメリカ入国と刑事事件の逮捕状について
ひな祭りですね。子供さんのいる家庭では、ひな人形を飾っておられるかもしれません。日本の伝統はぜひ守ってほしいですが、一体どの程度の家庭でひな人形というのは飾っているものなのでしょうかね。子供のころは、菖蒲などをお風呂にいれて入ったり、お彼岸のときには、野菜に足をつくって立たせたりした思い出があるのですが、こういった習慣はまだ続いているのでしょうか。続いてほしいものです。
さて、今回は三浦さんが紙面やテレビを少なくとも日本では賑わせているようですが、外国人がアメリカに入国する際の逮捕の状況について、少々考えてみたいと思います。いくつかのメディアから質問を受けた内容と重複しますが、皆さんに知っておいていただきたいことなので、ここで考えます。
20数年前の事件でなぜ今頃逮捕するのか、という話題でまずもちきりでしたが、実はこのような逮捕は、刑事事件と移民法のシステムを知っている者にはあまり驚くことではありませんでした。実際、アメリカで罪を犯したと思料され逮捕状が出ている場合、その外国人が逮捕されずにアメリカ国外に出ると再入国の際に逮捕されているケースはこの5、6年少なくありません。今回の三浦さんの逮捕はサイパンだということで、アメリカ国内ではないので、その点通常のケースとは違いますが、たぶんこのように逮捕されていると、カリフォルニアに移送されることにはなると思います。弁護人は、もちろん移送を争う手もあるのかもしれませんが、早急にロスアンジェルスの州検事局と保釈等の条件につきネゴをはじめるべき事例ですね。
アメリカの移民局が、連邦の裁判所や行政機関と組んで外国人に対して逮捕状や起訴をされているケースをコンピュータで一元管理をはじめたのは、2001年の同時多発テロ以降数年経った時です。2003年頃には、コンピュータが直結されるようになり、入国審査のときに、逮捕状、起訴の事実、それに過去の犯罪歴もでるようになりました。連邦の官憲、たとえば移民局、国税局等から逮捕状がでていると即座にコンピュータにでるので、その場で逮捕できるようになったのです。同時多発テロは外国人でアメリカ国内で犯罪歴がある人間が犯人の一人でしたから、外国人対策に力をいれたわけです。その後、連邦だけではなく、各州もそのシステムに情報を直結するようになったので、州の裁判所や行政機関にある情報も入国審査のコンピュータにでるようになったわけです。私が担当した事件でも、80年代に万引きをした人が永住権を持っていても、入国審査で引っかかった事例もありました。アメリカで事情を聴取されただけの事例で、逮捕されず、何も問題ないということで日本に帰国し、数年後再入国するときに逮捕されてしまった、という事例もありました。ですので、過去に犯罪歴のある外国人が逮捕されるケースは格段に増えてきたのです。ここ5,6年はそういった刑事事件の弁護のケースも増えてきました。
でも、今回三浦さんはサイパンに入国しようとして捕まっているので、上記のシステムは関係ないのでは、と思う方もいらっしゃると思います。直接アメリカに入国しようとしたわけではありませんね。ところが、上述した、システムを導入したことで、国外に逃げていた犯人がこの5,6年多く逮捕されるようになってきたのです。古い事件でも、起訴されていれば公訴時効は停止しますので、「もう大丈夫だろう」と考えて再入国を試みる犯罪者もいますね。一度逮捕されていれば指紋もとられていますので、最近入国審査で導入された指紋認証システムで、ひっかかる人もいるわけです。そうすると各警察署も、古い事件の解決に向けて積極的に動きます。テレビ番組でも古い事件を扱う番組が多いですね。もちろんDNA鑑定などの技術の進歩もありますが、多くは外国に逃亡していた犯人が捕まるというパターンが顕著になってきているのです。コールドケース(ColdCase)と比喩される古い事件に対応する部署についても、各警察署で、この5、6年活発につくられていますが、上記のシステムの導入とは無関係ではないのです。
このようにみれば、80年代だろうと、古い事件が最近になっていきなり動き出した背景がわかっていただけるのではないでしょうか。ある意味、移民法についての改正が影響しているのですね。ですので、もし過去にアメリカで逮捕される危険性がある行為をしている人は、再入国の時には注意が必要なのです。
また次回新しいトピックを考えていきたいと思います。
Posted by jinkencom at
19:19