2005年12月24日

アメリカ連邦議会の下院が通過させた法案4437号の詳細

もう年も押し迫り、仕事をされている皆さんは「締め」があってばたばたされているのではないでしょうか。年末といっても別にいつもと同じように日は昇って沈むのですが、なんとなく仕事が忙しくなります。体には注意して2005年を乗り切りましょう。

さて今回は「じんけん」ニュースにふさわしいというか、皆さんに「人の権利」とはどういうものか注意を喚起していただくだけではなく、ちゃんと一人一人の意見を持っていただきたいと思っているトピックです。

アメリカ連邦議会の下院において移民や外国人に驚くほど厳しい法案が通過しました。下院が通過させた法案4437号の詳細を皆さんにも分かっていただきたいと思います。下手をすると110万人のアメリカに滞在する外国人が強制送還の対象となってしまう可能性があります。ここで、外国人というのは、非移民ビザを持ってアメリカに滞在をしている人だけではなく、永住権保持者も含まれるということを認識してください。まず、大まかにどのような法案か考えて、その後、具体的にどのような内容が法案に含まれているのか考えていきたいと思います。

今回の法案はアメリカに不法滞在をしていることを移民法違反だけではなく、刑法に抵触する事実だと看做すことを許すことを軸としています。また、外国人に対してのデュープロセス保護の範囲を縮小すること、強制送還の手続を簡素化すること、新たに強制送還の対象となる道徳違反の罪の範囲を拡大すること、帰化要件の厳格化などが含まれています。この方向性を見ていただければわかりますが、移民で成り立ってきた国とは思えないようにアメリカに滞在する外国人に対して規制を厳しくしています。外国人であるがために、司法においても不利益を甘受しなければならないということが発生することは容易に想像でき、アメリカ連邦憲法に抵触する自体が発生するでしょう。というか、この手の法律が成立し、私のクライアントが不利益を被ったら、連邦最高裁まで闘いたいと思います。

この法案に具体的に記載されている事項をいくつか考えておきたいと思います。
箇条書きにしてみます。1)抽選によるビザの取得を取りやめる、(2)各州、各郡その他の警察機関に移民法に関する権限を与え、不法滞在者等を逮捕・勾留することを許す、(3)一罪の軽罪、たとえば飲酒運転等に基づき強制送還を許すこと、(4)移民局の捜査権限を増強し、外国人の犯罪の取締を強化すること、(5)麻薬捜査、人身売買などの罪に関しての捜査・逮捕権限を付与すること、などが挙げられます。

以上を見ると、移民法自体を厳しくして、外国人を取り締まるだけではなく、移民局に強大な捜査権限や逮捕権限を与えるだけではなく、連邦の行政作用である移民法に関する権限を州その他の警察機関にも与えるということを法案は許しています。行政権力の付与を広範囲で認めることになっています。

上記がある程度の法案の概要です。来年一月議会が再度開会されると、この法案は上院に附され審議されます。様々なリベラルな団体や移民のサポートをする団体から反対の動きはもちろんあると思いますが、もし、皆さんにも影響する可能性があれば、ぜひ地元の上院議員などにご自身の意見を述べていただきたいと思います。年末にこういった話題は憂鬱になりますが、しっかり私も自分のスタンスを打ち出していきたい問題と思います。それでは、また次回までさようなら。良いお年をお迎え下さい。  
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2005年12月09日

H−1Bビザにまつわる事件の紹介

本格的な冬ですが、皆さん風邪は引かれていませんか。せっかくのホリデーシーズンですから、暖かくして楽しまれてください。年末に向けて、皆さんはどのような予定を立てられているのでしょうか。楽しい年末を送られてくださいね。私はどこか旅行をしようか、はたまた今未出版のままおいてある本の執筆や発表論文に時間を使おうか激しく悩んでいます。

さて、今回はH-1Bビザに関する話題をご紹介したいと思っています。私も現在、実際に仕事としてかかわっているトピックでもあります。ビザの申請に関する話題ではないので、これからビザを取得しようとする方には有用性は低い話題かもしれませんし、なかなかこのような事件には巡り遭わないかもしれません。しかし、私が弁護士になってから一貫して主張しているように、弁護士たる者、法廷や裁判を知らなければならない、というコンセプトがいかに大事であり、ビザの申請にもその経験が必要かを感じていただけるのではないでしょうか。すなわち、ビザの申請書類の作成だけを代理しているだけでは、移民法の全体像は見えてこないのです。

さて、今回考える事件はミシガン州で起こりました。アメリカ連邦労働局は、あるコンピュータ会社に対して移民法違反に関する責任を行政審判を通して追及していました。最終的にはこのコンピュータ会社は225万ドルを自社の外国人被雇用者に過去の賃金未払分として支払うことが確認され、さらに40万ドルを罰金として連邦政府に支払うことになりました。なぜ、罰金等を支払わなくてはならかったのかというと、H-1Bビザに関連する移民法に違反したという内容でした。

ではどのような移民法に反していたのでしょうか。
このコンピュータ会社は外国人をH-1Bビザによって雇用していました。H-1Bビザの申請については移民局の審査の前段階において、アメリカ連邦労働局が、雇用者が最低賃金を支払うか確認する審査があります。確認の方法は書類によるだけですが、この趣旨は安い賃金で外国人を雇用することを防ぐ意味があります。この労働局のステップについて考えると2つの趣旨があるのではないかと鋭い方は気づくのではないでしょうか。安い賃金で外国人を雇用すると、アメリカ国内に現存する労働力に影響する
という一面、また立場の弱い外国人労働者に差別的な待遇をすることを防ぐという一面があるのだと思います。

今回は主に後者のポイントにフォーカスがあたりました。すなわち、この問題となったコンピュータ会社は大量の外国人をH-1Bビザで雇用し、定められている最低賃金の支払いも継続的にしていませんでした。また、いろいろな理由をつけて外国人労働者を休職扱いにして、賃金の支払いもしませんでした。もちろんこれらの行為は移民法に違反している行為なのですが、重要なのは同時に労働法にも違反していたということです。結局、この会社は合計265万ドルの罰金等を支払い、さらに18ヶ月間H-1Bビザによる雇用が禁止されてしまいました。

この事件から学べることはたくさんあります。ひとつは雇用ビザをスポンサーする場合、雇用主は移民法だけをみていては片手落ちということです。労働法も連邦、州と複数存在しており、違いも少なからずあります。しかし、労働法上、外国人をどのように扱うのか、ちゃんと把握していなければなりません。もうひとつ大きなポイントは申請書類の作成については、ビザの取得ということだけに主眼を置くのではなく、外国人がビザを保持している期間中、どのような責任が生じる可能性があるのか、どのような法的な問題があるのか、把握しておくことが重要と思います。

雇用契約書やビザの申請書類というのは、所詮、将来的にある一定の法律的な問題を防ぐための道具にすぎません。問題を起こすのは契約書や申請書類ではなく、人です。ですから、訴訟や今回のような行政処分のようなバトルする場面を経験してはじめて知ることもある、ということを理解していただきたいと思います。次回また新しいトピックを考えていきたいと思います。  
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2005年12月02日

学生ビザ(Fビザ)申請における通達について

今回はちょっと私が風邪を引いていたので、じんけんニュースの執筆が遅れてしまいました。ちょっとした風邪だったのですが、やはりいろいろ影響がでてしまいます。楽しみにじんけんニュースをお待ちいただいている皆さんにはご迷惑をおかけしました。皆さんも季節の変わり目ですので、お体の調子には充分注意してくださいね。

さて、今回は学生ビザに関する話題です。
最近、アメリカ国務省は各国にあるアメリカ大使館・領事館に対して、学生ビザに関しての通達を最近出しました。ご存じの方も多いように、アメリカで学生をする場合には、外国人は通常Fビザ、専門学校などに関してはMビザという査証が必要になります。この学生ビザを取得するには一般的にはいくつかの要件を満たさなくてはなりませんが、大使館・領事館における裁量が加わる場合も多いのが現状でした。今回の通達によって、要件をどのような情報や書類をそろえれば充足したとみなされるのか、ある程度アメリカ政府の明確な方向性が示されました。私は非常に良いニュースだと思います。以下、いくつかのポイントがありますので、箇条書きっぽくなってし
まいますが、順次考えていきたいと思います。

まず、学生ビザを得るための要件として「自国に帰る意思」というのが要求されます。もちろん、他の非移民ビザについても同じように「自国に帰る意思」が要求されるのですが、今回の通達は学生ビザに限るものです。この「自国に帰る意思」というのは査証を受けられるかどうかの決定に非常に影響します。学生ビザを申請する外国人にとって、どのようにして「自国に帰る意思」を査証申請の際示していくかというと、たとえば、家族が自国にいるとか、住む場所が自国にあるとか、自国に帰ってきたら仕事があるとか、といった内容の情報や書類が必要になってきます。

ところが、実際学生ビザを申請しようとする外国人は若い人が多かったり、仕事を将来にらんで勉強をアメリカにしにいくという人が多いわけです。そうすると、自国に家を持っていたり、税金を払っているといった証明はし難いことが多くあります。また、アメリカに勉強をしにアメリカにいくという場合、ある程度の時間的な計画はあるでしょうが、その計画に沿って勉強が修了するとは限りません。このように学生としてアメリカに行きたい人には不安定な要素があるのが常なので、申請においても不安な要素になってしまうわけです。

このような状況をアメリカ国務省は理解をした上で、今回の通達により、学生ビザの申請に際して「自国に帰る意思」があるかどうかは、そのビザ申請の時点のみの事情で判断しなくてはならない、ということを通達しました。つまり、将来的にそのビザ申請者が自国に戻らない可能性があるのではないか、という推測はしてはいけない、ということを明確にしたのです。よって、ビザ申請時に、自国に帰る意思がある、ということさえ示せればビザを発給されるということが明確になったのです。ですから、これからは、将来的に学生は日本に帰るのか、帰らないのかと先読みされることはないので、しっかり申請時点で、勉強が終わったら帰るつもりです、という意思を書面にするなりして示すことが大事になるのです。

次のポイントですが、学生ビザの更新についても、大きな事情の変化がない限り、できるだけ発行を許すという方向にするようにという通達の内容があります。すなわち、ビザスタンプが更新されないとアメリカを出入国することができなくなり、現在学生をしている外国人は、アメリカ再入国を拒否されてしまう可能性を恐れて、アメリカから出国できなくなってしまうという事態が発生します。今回、アメリカ国務省はこの事態があることを理解し、出来る限りビザの更新を許す方向で審査を行うことにしました。

第三のポイントですが、Fビザ申請時に各学校からI−20という書類を得ることが要件となりますが、どのような学校であるかということで申請の許可、不許可を決めてはならないことを通達しました。すなわち、英語学校であろうと、博士課程であろうと学校であることは変わりなく、どのような勉強をするかどうか、ということでビザの発給を左右してはいけない、ということを明示したのです。I−20を発行できる学校であれば、移民法上どこであろうと同等に評価を受けなくてはいけないのですね、まあ、考えれば当たり前ですけど。

今回は長い通達で、他にもいくつかポイントはありますが、以上がメインなポイントだと思います。いままで不安な要素があった学生ビザ申請ですが、ある程度明確な基準が示されたことになり、これから学生ビザを取ろうと思う人、更新しようと思う人には朗報なのではないでしょうか。ということで今回はここまでにしておきます。また次回までさようなら。  
Posted by jinkencom at 08:17Comments(0)TrackBack(0)