2004年12月29日
機械読み取り式パスポートの運用について
寒くなってきましたね。昼食を事務所のみんなで食べに行くときに、スープなどの温かいものを食べる傾向がはじまりました。これから年末に向けて冬支度ですね。布団からでるのは億劫になってきますが、私は寒い日の朝の空気が嫌いではありません。皆さん、風邪に注意されてください。
さて、機械読み取り式パスポートでなければアメリカに入国させないという制度を導入すると言われて久しいですが、2004年10月26日から、この制度の導入が本格化し、新たに簡単なルールが加えられました。もう、ほとんどの日本人の方々は機械読み取り式パスポートをお持ちだとは思いますが、一応念のために今回JINKEN.COMニュースでご紹介しておきます。
世界22カ国の不法滞在等が少ない国民にはアメリカに入国する際に、ビザを必要としない入国が認められています。日本もその国のひとつにあげられていますので、90日を限界として、日本人はアメリカに入国し、観光やビジネス目的(アメリカ国内で賃金を得ることは不可)で行動ができます。
このビザなし入国(Visa Waiver Program)を利用する場合には、機械読み取り式パスポートを持って入国することが義務づけられ、この法律は2004年10月26日から厳格に運用されることになりました。ところが、法律はつくっても、対象となる外国人が良く知っていなくては、問題が発生することは目に見えています。ですので、アメリカ移民局はワン・チャンス規定を設けました。つまり、10月26日以降でも、機械読み取り式パスポートを持っていないビザなし入国者に対しては、一回は入国を認め、その際に、機械読み取り式パスポートを次回から使うように注意書きが渡されます。さらにこの例外的な取り扱いで入国を
許されると、そのパスポートには、「例外によっての入国」といった内容が記されることになります。その後の入国の際には、機械読み取り式パスポートを使ってビザなしで入国するか、ちゃんとビザを取って入国をしなければならなくなるのです。
もうひとつの違いは、ビザなし入国をする場合には、家族といえども機械読み取り式パスポートを全員持たなくてはいけなくなったことです。以前は家族をパスポートに「併記」することができましたが、今後は各人が機械読み取り式パスポートを持つことが義務づけられます。
2005年の4月25日まではアメリカ移民局は機械読み取り式パスポートを持たない外国人でビザなし入国を試みようとしている人を乗せてきた航空会社等に罰則を科しませんが、それ以後は、航空会社等が罰を受ける可能性があるので、チェックインの際から、まずパスポートを確認されることになります。
アメリカ主導で振り回されている国もたくさんあるようですが、アメリカに入りたければ従ってほしいという見方なのでしょうね。皆さんもよくご自身のパスポートが機械読み取り式パスポートかどうか、確認してくださいね。それでは、また次回までさようなら。
2004年12月25日
永住権申請の要件となる労働条件承認証明について
今日は、深刻な刑事事件の保釈請求をするためにフリーウェイを走っていたのですが、いつもとは違い、がらがらなところと非常に混んでいるところが対照的でした。もう仕事が一段落して、ショッピングなどをされている方も多いのでしょうね。パーティーなども増える季節ですが、とにかく飲酒運転には気を付けてください。この時期一番検挙される率が高い犯罪ですから。
さて、今年最後のJINKEN.COMニュースですが、今回は雇用を通して永住権を取得する場合の前段階として要求されている労働条件承認証明について考えてみます。
雇用を通して永住権を申請する場合、その前段階として一部の例外を除いて、Labor Certificationを取得する必要があります。このLabor Certificationをなぜか一般的には「労働許可」と日本語化しています。私もJINKEN.COMの中であまり考えずに使ってきましたが、間違った訳語であると判断しました。ここでは労働条件承認証明という名前をつけ、これから私はこの「労働条件承認証明」という単語をLabor Certificationに割り当てようと思っています。なぜかというと、Labor Certificationから承認を受けたとしても、それだけでは永住権を申請する条件が整ったというだけで、労働できる許可がされたわけではありません。以下詳述しますが、労働局が認めているのは、「●●という条件のもとでは、この外国人は雇用ベースの移民申請をしても良いよ」という内容であって、「労働しても良い」ということではありません。この点クリアーにしておいてください。
最近では現行の方法で労働条件承認証明を得るには少なくとも約2〜3年かかります。これはすべての審査を手作業で行っていたからです。最近の申請分に関してはカリフォルニアは審査量がパンクして、テキサスやフィラデルフィアに送って、さらに遅れを生じているという現状もあります。そこで、この遅滞を解消しようと政府は案をまとめていたのですが、この度原案がまとまりました。
PERMと呼ばれる申請方法です。これから労働条件承認証明といえばPERMと覚えておいてください。約100ページにわたる原案がつくられ公開されましたが、内容はまだ一般的ではありません。
新しいシステムは申請をコンピュータ化し、申請前には適宜法律に従って、雇用の募集をしておかなければなりません。募集というのは、一般公募をして、アメリカ人では遂行するのが困難なポジションなので、適格なアメリカ人応募者がいないということを示すために行われます。施行についての期日はまだ現実に指定されていない状態です。また、賃金については、たとえ外国人を雇ったとしても、アメリカ人と同等の金額を支払わなければいけないということになっています。面白いのは、今まではリクルートの結果を添付しなければ、申請ができませんでしたが(RIR申請の場合)、今回のシステムではリクルートの結果を添付する必要はなく、調査された時に政府に提出できるように書類を手元においておけばよくなりました。また、審査の時間が大幅に短縮され、申請から45−60日で結果がでるようにするという目標があります。審査に関して、基準をある程度コンピュータ化するという技術の進歩があるために短縮が可能となると考えられています。またプロセスに費用を課すという動きもありますが、今回発表されたレポートではまだどのような場合に費用が発生するのかはっきり規定はされていません。
これから数十日中にもう少し固まった案がでてくるでしょうが、現状では、とにかく2,3年少なくともかかっている審査期間を大幅に短縮する方針であるということが明らかになりました。ですので、細かい規定が設定された時点で突っ込んで考えていきたいと思っています。まあ、今回はまだPERMについて発表されたというだけなので、実際に使われていくには数十日時間がかかるかもしれません。また規定が整い次第、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
今回のJINKEN.COMニュースが今年の最終回となるようです。皆さんが安全にホリデーシーズンを過ごされることを心からお祈りしております。また、来年も変わらぬご愛顧、宜しくお願いいたします。それではまた来年このJINKEN.COMニュースで新しいトピックを考えていきましょう。良いお年をお迎えください。
2004年12月10日
H-1Bビザ、Lビザに関する新しい法律について
本日、ブッシュ大統領が署名した新しいH-1BおよびLビザに関する新しい法律が発効することになりましたので、皆さんに詳細をお知らせしたいと思います。法律の名前はH-1B Visa Reform Act of 2004とL-1 Visa Reform Act of 2004です。この新しい法律によって、移民法の一部が改正されることになりました。H-1BおよびLビザの基本的な詳細については、JINKEN.COMホームページ内のビザ情報BOXを参照されてください。
■H-1Bビザの改正点■
●申請料の変更について
2003年10月1日以前にはH-1Bビザ申請者は1000ドルの追加申請料が要求されていました。この費用はアメリカ市民等の職業訓練のために使われるということが法律化されていたのです。2003年10月1日以降この費用は要求されなくなりましたが、今回の法改正で新たな体系のもと、追加申請料がHビザ申請に必要となりました。
今回の法改正で、追加申請料は1500ドルになりました。ただし、子会社、関連会社を含め、すべてで25人を上限とするフルタイムの被雇用者がいるスポンサー会社については、追加申請料は750ドルに据え置かれることになりました。つまり、スポンサーとなる会社において25人の被用者がいるかどうかで申請料に変化が生じることになったのです。今まで存在していた追加申請料免除枠(非営利団体等に適用)については、法改正はなされていませんので、今まで通り追加申請料は免除されます。この新しい追加申請費用については2004年12月8日に申請を行う分につき適用されることになりました。
さらに追加の500ドルが発生する場合があります。詐害行為防止・捜査費(Fraud Prevention and Detection Fee)と称される新しい費用で、(1)新たにH-1Bビザを申請する場合、また雇用主が変わった場合には支払うことが義務づけられました。つまりHビザの延長申請をする場合以外には、必ず支払わなければいけなくなったのです。この500ドルについては、2005年3月8日以降申請をする場合に適用されます。
上記の追加申請料に加え、通常の非移民ビザ申請料185ドルは従来と変わらず必要です。
●上限発行数の変更について
H-1Bビザには65000件の新規発行数という上限がありますが、この上限数に関しての変更はありません。今回の法改正では新たに20000件のH-1Bビザを修士以上の学位をアメリカの教育機関で取得した場合には優先的に発行するということを決めました。この20000件については65000件とは別の枠となります。この新規2万件の枠が埋まった場合には、通常の65000件の枠内
でカウントされることになります。現在2005年度の通常枠もすでに65000件に達しているわけですが、2005年3月8日より、この新規20000件の枠が使えるようになりますので、2005年度分の取得もこの新規枠に限り可能となります。まだ、詳しい取得方法は移民局から発表されていません。発表され次第、追ってみなさんにお伝えしたいと思います。
■L-1ビザの改正点について■
L-1ビザについては一部の企業が濫用していた背景があり(外国から安く人を雇ってアメリカにつれてくる)ましたので、いくつかの点が変更されました。
●勤務地について
2005年6月6日以降に新規Lビザ申請、Lビザの更新、Lビザの内容の変更等を移民局に対して行った分に関しては、スポンサー会社の所在地以外での勤務は基本的に禁止されることになりました。もし、スポンサー会社以外の場所で働くことが必要な場合には、仕事の内容に必然性が要求されることになりました。
●追加申請料について
H-1Bの項目(上述)で述べた詐害行為防止・捜査費(Fraud Prevention and Detection Fee)と称される新しい費用についてはLビザにも適用されることになりました。
以上が今回の改正点の主なポイントです。
それではまた次回まで、さようなら。
2004年12月08日
判例−飲酒運転と強制送還について
JINKEN.COMニュースの執筆が遅れてしまいました。私が風邪をひいたからです。この年末の忙しい時期に風邪をひくのは本当に皆さんに申し訳ない、と思いつつ、コンピュータからも離れ、ゆっくりしました。スクリーンがない一日もおつなものですね。皆さんもたまにはスクリーンから目を離して、山の緑や海の青を楽しんでくださいね。
さて今回は飲酒運転(Driving Under Influence)に関してアメリカ連邦最高裁判所から出された判例について皆さんと一緒に考えていきたいと思います。移民法の強制送還に関しては現在怒濤のように変化が起きていますが、強制送還をし易くしようとしている点ではあまり変化がありません。「行き過ぎ」と思える事例も少なくありません。私も法廷弁護士として移民裁判所にもこの12月は頻繁に通っています。
以前から、犯罪にアメリカで巻き込まれると強制送還の憂き目に遭うということはJINKEN.COMニュースでもご紹介してきました。永住権を持っていても、現在強制送還の手続をとられてしまっているケースも少なくないのです。
犯罪歴のある外国人にとっては非常に肩身の狭い判例が多く出る中、さすがですね、アメリカ連邦最高裁判所では、非常にフェアな判例がだされました。ここでは割愛しますが、2001年にも移民法に関して、私が涙してしまうくらい感動した判例をだしているアメリカの最高裁判所ですが、今回のケースも非常に「納得」できる内容の判例をだしてくれました。こういう判決があるからアメリカで法律業務をやっていて楽しいのです。
飲酒運転それだけでは、強制送還にひっかかる罪とは一般的に移民法では考えられていません。もし何罪も重ねて飲酒運転があると、その人の道徳的な問題があると考えられますが、飲酒運転をしただけで、強制送還、つまりアメリカで築き上げてきた何もかも失うということはあまりにも酷であるという認識は法律家の間でも常識的になっています。
ところが問題になるのは飲酒中に運転をして人を轢いた場合です。飲酒中に人を轢くと、「暴力を伴う犯罪 (Crime of Violence)」という移民法の条文に抵触してしまい、そのことだけで強制送還事由にひっかかってしまいます。
この問題は移民法を手がける弁護士にとっては悩みの種でした。もっとも書類だけ作成している事務所ではたいして気にも留めなかったかもしれませんが、移民法廷では、飲酒中の事故という事例によって何人もの外国人が強制送還の憂き目に遭ってきたのです。
たしかに、酒を飲んで、節操もなく車を運転して人を轢いているのですから、感情的には許し難いですし、被害者の家族にしてもやりきれない思いがあると思います。私の友人も飲酒運転をしていた無責任な人に殺されました。感情的な思いは法律家のなかでもあると思います。しかし、移民法上のCrime of Violenceという定義を見ると、基本的には暴力犯で「故意」がある犯罪に限られます。
「故意」というのは法律用語ですが、簡単な例を使って説明すると、傷害罪において人に傷を負わせようと思う心を指します。この悪い心をもって犯罪をする人を移民法では暴力を伴う犯罪として定義しているのです。飲酒運転で人をひき殺してしまうという場合は、確かに飲酒をして運転するという故意はありますが、最初から人をひき殺すという故意を認めるのは難しいケースが多いわけです。人の死を引き起こしたとしても、最初から殺そうとは思っていなければ、人を殺す故意を認めるのは法律上難しいのです。もちろん安全に運転する注意義務に違反して人を轢いていることはあきらかですから、「故意」ではなく、少なくとも「過失」責任は負うとは思います。
今まで、アメリカの連邦裁判所ではこの飲酒運転において過失致死を起こしていた外国人の強制送還事件で、「暴力を伴う犯罪」であると認定する裁判所と認定しない裁判所がありました。今回の最高裁判所の判決で飲酒運転において過失により人に致死傷の結果を起こしたケースについては移民法上の「暴力を伴う犯罪」には該当しないと判断しました。たしかに引き起こした結果については深刻かもしれませんが、故意についての判断はこの最高裁判決は妥当であると思います。もし、興味のある方は連邦最高裁判所が2004年11月9日に判示したLeocal v. Ashcroft, U.S. (November 9,2004)という事件をリサーチされてください。
今回は少し難しい内容でしたが、非常に重要な判例なのでご紹介してみました。皆さんは風邪をひかれないよう、注意されてくださいね。それではまた次回まで、さようなら。